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悲しい電話

 息子の学校は、地震の後3週間ほど休校になっていたけれど、
明日から通常どおり授業を再開するとの連絡があった。
とはいっても、学校があるのは来週1週間だけで、
その後は2週間ちょっとイースターのお休みに入るのだとか。
4月は実質来週1週間だけ。

 だんだん周りの生活も「通常」に戻りつつあるのかな。
最近はだんだん暖かくなってきたせいか、電力の消費量も下がったらしく、
これまで各駅停車だけ運行してきたうちの最寄の私鉄も、
急行を運行するようになった。

 明日から学校となると、また色々準備しなければならない。
すっかりたまっていた3週間分の宿題や、体育のウェアーも
バッグに入れて。
小さくなってしまった革靴も買い換えて…。

****************
 夕方、夕飯の支度をしていると、携帯に電話。
出てみると、外国人だとすぐわかる女性の声で「もしもし、こんばんは。」
といっている人がいる。
「こんばんは。」ととりあえず日本語で返事をすると、
「Gです。トツゼンすみません。ゴメイワクヲおかけします。」
とこなれた日本語のフレーズ、でもアクセントは外国人。
先日交通事故で亡くなった昔の同僚Hさんの奥さんのGさんだった

 突然の電話にびっくり。
私の携帯番号どこで知ったんだろう。
Hさんの携帯の中に残ってたんだろうな。

 カザフ人のGさんは、日本語がほとんどできない。
それからは、トルコ語で会話。
トルコ語も、カザフ語とは近いところもあるとはいえ、やっぱりまったく別の言葉。
ところどころ言いよどんでいた。

 涙声のところもあって、本当に気の毒。
「ワタシ、ヒトリボッチ。サミシイデス、サミシイデス。
N(Hさんの名前)カエッテコナイ。Nイナイ。」
一人で家にいると寂しいんだろう。

 「近くにお友達とかいないの?」
「いない。まったくいない。ほら、私、今までほとんどNと二人っきりだったから。」

 そのあと、実は悩み事があるらしい。
交通事故の後処理で、保険屋さんから色々書類が届いたり、
警察に行ったりしたらしい。
「でも、日本語ができないから、何を言われているのか、何が書いてあるのか
わからない。だれも助けてくれない。」
寂しいだけではなくて、実際的な面で色々困ってるんだなあ。

 もうちょっと聞いてみると、
どうやら事故は、Hさんが運転していた車で起こったらしく、
トラックとぶつかってしまったらしい。

 「ご家族は?義弟さんはどうしたの?」と聞くと、
「お義母さんはオタルに帰ってしまった。義弟は、都内に住んでいるけれど、
家族や仕事もあって手伝えるのは土曜日だけって言ってた。」
彼女の説明によると、地震の後、Hさんは仕事でほとんど寝ていないほどの大忙しで、
事故にあってしまったとのこと。
弟さんは、「どうして体に気を使ってあげなかったの。
どうして休ませてあげなかったの。」とGさんを責めたとか。
「保険屋さんからの書類を義弟に渡した。でも、すごくイライラしていて、
話を聞いてくれない。」
と言う。
「でも、義弟も辛いんだと思う。ワタシお金なんて要らない。全部弟にあげる。
でも、意味がわからない紙とか、警察に行っても説明がわからないし。
辛いよ。」

 その後、彼女は、トルコ語、日本語交じりで、
事故に遭ったのは、勤務中だったので、労災とかそういう可能性はないのか、
ただ、事故を起こしたのはHさんなので、車に同乗していた人や
事故の相手方に訴えられたりしてしまうんじゃないか、
どんな保険に入っていたのかとか良くわからない、
銀行口座や借りている家の契約等がすべて夫の名義になっているので
どうしていいわからない、等々説明していた。
なるほど、困った状況だなあ。

 あとはすすり泣いてしまって、返事にも困ってしまう。

 「とりあえず、近々そちらに寄るから、まずは落ち着いて。」
といったら、少し元気になったみたいだった。
「いつ?」
「明日か、あさって、寄るね。」
「5時までは仕事に行ってるの。その後はずっと家にいるし、週末もずっといる。」
とのこと。

 携帯電話の番号をきいて、電話を切った。

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 電話を聞いていた夫は、
「絶対、意味のわからない書類にサインしたり判子を押したりするなって、
忠告しなよ。」とのこと。
確かになあ。

 それにしても、私に何ができるだろう。
家族でも親戚でもないので、できることには限界があると思う。
カザフスタンに帰った方がいいのかなあ。
「それは彼女が決めることだと思うけど。カザフスタンに帰っても
仕事とか家とかないかもしれないし、あまり変なこと言わないほうがいいよ。」と
夫は言う。
それもそう。
「でも、日本で生活していける経済力とかあるのかねえ。」
確かに。
 「とにかく一回会いに行って、話を聞いてあげたら。
それで、できることだけしてあげればいいんじゃない。
『とりあえずカザフスタンに一時帰国して、考えをまとめてみたら。』
っていう言い方でもいいかも。」と夫は言う。

****************
 気になって、ネットで「外国人通訳ボランティア」とか
「無料法律相談」とか検索してみた。
外国人に無料で通訳をしてくれるボランティアは、
圧倒的に、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語。
カザフ語なんてまずないし、トルコ語でも見つけられない。

 無料法律相談は、日弁連のHPを探してみたけれど、
電話でとか一定の決められた日に「無料相談会」みたいなものが設けられているだけで、
それ以外だと、30分5,000円の法律相談のサービスが受けられるみたい。

 外国人が困ったときって、本当に支援を受けれる手段が少ないんだなあ。
もしかしたら、彼女が住んでいる自治体で何かサービスがあるかもしれない…。
ちょっと探してみようと思った。

**************
 息子は、夜、また例のSkypeの中国語レッスン。
地震だ、夫の入院だ、おたふく風邪だと3週間ぐらいブランク。
悲しい電話_c0191625_2136626.jpg

 先生から、「結構忘れちゃってるねえ。これから数回は復習にしましょう。」
と言われていた。
言葉って、忘れるの本当に早いよなあ。
<今日のプライベート充実度50%>

by makikoai2005 | 2011-04-03 21:08 | 友達 | Comments(2)
Commented by Yasasin at 2011-04-04 19:04 x
とても気の毒な話です。。。海外に暮らす上でいかに言語が大切か思い知るような出来事ですよね。
私は結構カザフスタンの友人が多いんですけどね、トルコ国内です。彼らは割りとコミュニティの結束が強いはずなので日本でも集まりはあると思うんですけどね。
大使館とか、そういう助けはないのでしょうかね?本当にお気の毒でなりません。
Commented by makikoai2005 at 2011-04-05 02:37
Yasasinさん
そうなんです。突然電話がかかってきたのでびっくりしましたが、昨日聞いた限りでは、言葉が通じないって言うのは結構大変なんだろうなあと思いました。特に事故とか保険とか、言葉が難しそうです。
 夫は、「すごく、かわいそうだね。心細いだろうに。まあ、そうはいっても、旧ソ連圏の人たちはたくましいところあるからね。女性なら、なおのこと。直ぐに再婚相手を見つけてしまったりするかもしれないよ。」とか言っています。その辺は良くわかりませんが、私がトルコにいたころはそういう人もいたなあ…。そのころと今とでは状況が違うのかもしれませんが。
 日本に住んでいるカザフ人の人たちは、直接知っているわけではないのですが、留学生が多いみたいです。彼女のように結婚して日本に来た人とは交友関係がまた違ったりするのかもしれません。日本にある大使館に助けを求めてみるのも一案ですね!
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